2017年12月10日日曜日

[万葉集] 01-0002 大和には 群山あれど とりよろふ・・・


大昔の風景が目に浮かびますね。


巻一・〇〇〇二
大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち
国見をすれば 国原は 煙立つ立つ 海原は  鷗立つ立つ
うまし国そ 蜻蛉島 大和の国は
舒明天皇

【大和には多くの山があるが、とりわけて立派に見えるのは天の香具山。
 その頂に登り立って国見をすると、国土には炊事の煙がしきりに立ち、
 海上にはカモメが飛び交っている。
 美しい国よ。蜻蛉島大和の国は。】

家々から煙が立ちのぼっているのは、食事の支度をしているのでしょう。それは、民の生活の豊かさを象徴しています。
そしてたくさんのカモメが飛び交っているのは、海もまた豊かな証しでした。
実際に、香具山からは海を眺めることができません。
しかしまるで広々とした海が見えているかのように詠まれているこの歌。それは、心で見た海でした。
現実をそのまま歌うより、想像の方が遙かに雄大な景色を映し出すものです。
天から降りてきた神の山、香具山。その上に立ち、豊かな国を眺めるのが舒明天皇です。
この壮大な歌は雄略天皇の巻頭歌とともに、万葉集の冒頭を飾ります。


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